平安時代・鎌倉時代の優れた筆跡「古筆」の世界を紹介。さらに国宝手鑑「見努世友」が修復後はじめて公開されます。
平安時代・鎌倉時代の優れた筆跡は、古筆と呼ばれ大切に さ れてきました。古筆の多くは和歌を書いたもので、ほかには写経や物語、懐紙や短冊、日記や書状など様々です。色とりどりの料紙を用い、優美な線で書かれた筆跡には当時の美意識がうかがえます。
国宝手鑑「見努世友」と古筆の美について
我が国の書は飛鳥時代以降、中国の書法を取り込みながら和様化してゆきますが、その中で平安時代には仮名が誕生するなど日本独自の文化が開花します。平安時代・鎌倉時代の優れた筆跡は南北朝時代には「古筆」と呼ばれ、今日に至るまで尊重されてきました。「古筆」は、一般的に平安時代・鎌倉時代の和歌を書いた筆跡を指しますが、広くは古人の優れた筆跡や絵画のことを意味し、歌書だけではなく、写経や物語、懐紙や短冊、日記や書状など、その内容は様々です。色とりどりの料紙を用い、優美な線で書かれた筆跡には当時の美意識がうかがえます。これらは、のちの時代に賞玩されるなかで、切り分けられて古筆切(断簡)として鑑賞されるものも少なくありません。古筆切は、鑑賞や蒐集を目的として掛軸や手鑑(古筆切を貼り込んだアルバム)に仕立てられ、多くの人の眼を楽しませてきました。
本展では、出光美術館の書の優品を厳選して、魅力あふれる古筆の世界をご紹介します。この度、綺麗によみがえった国宝の古筆手鑑「見努世友」も、修復後はじめて大公開します。
国宝手鑑「見努世友」と古筆の美 みどころ
これらは後の時代に切り分けられて賞翫される中で、掛軸や手鑑に仕立てられ、多くの人の眼を楽しませてきました。本展では、魅力あふれる古筆の世界を紹介するとともに、綺麗によみがえった国宝手鑑「見努世友」が修復後はじめて公開されます。
国宝・古筆手鑑こひつてかがみ「見努世友みぬよのとも」の修復後、大公開!
国宝の古筆手鑑「見努世友」は、江戸時代に古筆の鑑定を専門職とした古筆家が製作した基準作とされています。全229葉の古筆切が収められていますが、奈良時代の秀逸な写経切や平安時代に書写された優れた仮名の書を多数含んでいます。当館では、このたび、国(文化庁)と東京都より修理予算の助成を受けて、本格的な解体修理を行いました。本手鑑は、もともと折帖装の表・裏(両面)に本紙が貼られている状態でしたが、「保存」の観点から折帖を二帖作製し、表・裏の本紙をそれぞれ別々の折帖(片面)に貼り戻しました。修復して美しくよみがえった古筆手鑑「見努世友」を、一挙大公開します。
必見!出光美術館の古筆の名品がズラリ
平安時代11世紀に完成をみた仮名の世界。厳格な風情の漢字の書と一線を画し、仮名の優雅な字姿や流れるような線条は見た目に麗しく、私たちの眼を楽しませています。平安時代・鎌倉時代の優れた筆跡は、「古筆」と呼ばれます。古筆の多くは和歌を書いたものですが、写経や物語などもありその内容は様々です。本展では、仮名の名品とされる「高野切第一種」「継色紙」「中務集」、料紙のきらびやかさが光る「久松切倭漢朗詠抄」「石山切」、写経の優品である「大般若経 巻第九十四(薬師寺経)」「扇面法華経冊子断簡」など、当館所蔵の古筆の名品をズラリと展示します。
中世・近世における名跡にも注目
平安時代・鎌倉時代の優れた筆跡は、南北朝時代には「古筆」と呼ばれ、以後尊ばれてきました。とりわけ、平安時代の古筆は書の規範となり、多くの能書の憧れの的となります。鎌倉時代中期に才気を奮った伏見天皇(1265 – 1317)のほか、その息吹をうけた後奈良天皇(1496 – 1557)や後陽成天皇(1571 – 1617)、秀逸でダイナミックな書を手がけた本阿弥光悦(1558 – 1637)や烏丸光廣(1579 – 1638)らの能書(書の巧みな人)も、それぞれに古筆を蒐集・鑑賞している様子がうかがえます。本展では線の澄んだ中世の仮名古筆、きらびやかな料紙に書かれた近世の書跡の優品をご紹介します。
出光コレクションの茶道具の優品もご紹介
出光美術館の創設者・出光佐三(1885 – 1981)は「もの、ものを呼ぶ」と言っており、当館所蔵の茶の湯にまつわる美術品は、自然とコレクションとしてかたちをなしたと言えます。本展では、千利休(1522 – 91)の生誕500年を記念して、出光コレクションの茶の湯の優品を厳選して特集展示します。利休は『南方録』において、「掛物ほど第一の道具はなし」と述べており、多くの古筆(古い優れた筆跡)が賞玩されました。中でも墨跡(禅僧の書)が第一とされますが、掛物としての古筆切(歌切)もご覧いただきます。
国宝手鑑「見努世友」と古筆の美 各章の解説
古筆の美
「古筆」とは、南北朝時代の能書・尊円法親王の著した『入木抄』に「古賢のすぐれた筆跡」と記され、古くから尊重されてきました。とりわけ、平安時代・鎌倉時代の和歌を書いた仮名の筆跡のことを指します。仮名は漢字の書をもとに、点画の省略がなされて創られました。たゆたうやわらかな線条は心地よく、優雅な字姿が見た目に麗しい仮名は、漢字の書の厳格な風情と一線を画しています。色彩豊かできらびやかな料紙に美しい線で書かれた筆跡には当時の美意識がうかがえます。ここでは、平安時代の美しい仮名古筆のほか、厳格な風情で書かれた写経を通して古筆の多様な魅力をご堪能いただきます。
手鑑の世界 ─国宝手鑑「見努世友」の修復後大公開
室町時代末期以降、古筆の鑑賞が盛んになると古筆は切り分けられ、茶席の掛物に仕立てられたり、手鑑に押すため(コレクションするため)に古筆切を蒐集したりする様子がうかがえます。手鑑とは、厚手の紙(台紙)を繋げた折帖に優れた筆跡を貼り込んだものです。江戸時代初期には『御手鑑』(慶安4年刊、「慶安手鑑」とも)が刊行されるなど、古筆蒐集の最盛期を迎えます。手鑑のなかには、古筆鑑定を家業とする古筆家の鑑定の指針となる手鑑も編まれました。ここでは、修復後はじめて大公開される国宝の古筆手鑑「見努世友」をはじめ、当館に伝来する古筆手鑑を通して手鑑の世界へ誘います。
古筆の香り
雅やかな風趣漂う、仮名古筆が栄華を誇った平安時代。宮廷書法の伝統美が定着し、広まりを見せた鎌倉から室町時代。文化に華やぎを見せ、書の世界に革新をもたらした桃山時代。書の表情はそれぞれに時代とともに移ろい、個性の違いも字姿にあらわれます。鎌倉時代に才気をふるった伏見天皇は三跡の小野道風や藤原行成の書をよく学び、その書法を継承した後奈良天皇や、後陽成天皇をはじめとする桃山時代の能書らもそれぞれに古筆を蒐集・鑑賞した様子がうかがえます。ここでは、平安時代の書に憧れ、規範を求めた鎌倉時代から桃山時代までの書の優品をご紹介します。
特集 茶の湯の美 ─茶道具の名品
鎌倉時代に禅宗とともに中国より請来された喫茶の風習は、室町時代・桃山時代・江戸時代と時が流れてゆく中で、わび・さびなど日本人の美意識を反映しながら「茶」の文化を形成してゆきます。とりわけ、珠光(1423? – 1502)より創始され、千利休によって大成された侘茶の精神は、現代にまで受け継がれています。本年は、利休生誕500年を記念して、出光コレクションの茶の湯の名品を厳選して特集しました。利休は『南方録』において、「掛物ほど第一の道具はなし」と述べています。茶の湯の掛物として重宝された古筆とともに、茶道具もお楽しみください。
国宝手鑑「見努世友」と古筆の美 概要
開催場所 | 出光美術館 |
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最寄駅 | 日比谷駅 / 有楽町駅 |
所在地 | 〒100-0005 東京都千代田区 丸の内3-1-1 帝劇ビル9階 |
開催期間 | 2022/04/23(土) ~ 2022/06/05(日) |
時間 | 開始 11:00 / 終了 16:00 入館は15:30まで |
料金・費用 | 一般1,200円 高・大生 800円 中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です) ※出光美術館は事前予約制です。オンラインによる日時指定予約をお願いします。 |
公式サイト | 出光美術館 |
出典:出光美術館公式サイト